もういいんでないか

諦めたり進んだり振り向いたりする雑記

人の世にたのしみ多し 然れども酒なしにしてなにのたのしみ



お酒を飲むってすげいもんだな。とおもう。文化として確立されている行為というか。

それこそ、海外移住中は「酒以外娯楽のない国です」と言われてるだけあって、本当に山と海と酒しかなかった。まあなんかあるよね、ってレベルでカジノもあったけど。
本当に酒をとったら何も残らないような国で、街で、毎日毎日飽きもせず飲んで過ごしていた。
そのせいか酒以外に娯楽があって…、という日本に帰国した時本当にこの国はすごいとおもった。それが良い意味なのか悪い意味なのかは正直個人と国との相性次第ではあると、おもうのだけど。

そんな日本でも、おっさんたちが「飲みニケーションだ!」とか「最近の若いもんは飲み会に参加しない…」とか言うだけあって、遺伝子レベルで「酒を飲むこと」が人との繋がりに名をつけるような、文化として確立されている。
酒を飲むことが完全なる善とはされない世の中で、こんなに愛され、コミュニケーションのひとつとされている酒って。すげえなあ。ってまあ、ときどき、しみじみ、思うわけだよね。

酒の力を借りるって素晴らしいとおもう。
ちょっとお近づきになりたいあの人この人、ちょっと本音を話したいあの時この時。
アルコールという目に見えない猫に、手を借りるようにすがりついて、もう離れないぞくらいの勢いで、酔っ払う。

「酒を飲むと本音が出ちゃう」
「酒を飲むと理性が薄まる」
「酒を飲むとフラットになる」
そんな先人たちの数々の失敗談を背に、進むわけだ。なんてことない、飲み街を。無敵になった気持ちで。
たかが知れてるって毎回思う。飲み会って誘われるとめんどうくせえなあって最初は思ってしまう。
しかし、なんでこうも、一緒に飲んだ人を、たかだかの数時間を、愛しいと思うのか。



常々疑問に思う。なんなら思ったまま飲んでる。
そして、楽しくなっちゃって、なんか否定できないほどのものを抱え込んで、自分ごと正当化して、気持ちいい夜に変えてしまう。


「酔っ払いだから」って誰かが言った。
「そうか酔っ払いだからか」って誰かが言った。
この上ない平和具合。


特別お酒はひとりで飲むほど好きではないけれど、大切にしたいと思う。こういう実感と時間を。



タイトルは若山牧水の句より。
これしかないとばかりに若山牧水。